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手作り石けんを売るというコト
 私が石けん作りを始めたころ、まだ今みたいに情報は有り余っていなく、いきなりスイーツ石けんとかデザインに趣を置いた石けんなんて言うのは少なかった。頑張ってもコンフェッティやレイヤーだったり、色違いの石けんで型を使ってくり抜いてその部分を入れ替えたり、本当にシンプルだった。オフ会や集まりがあると言えば名刺代わりに自作の石けんを持っていき、帰りにはまた人の作った石けんや余った材料をバッグいっぱいにもらって来ることも珍しくなかった。

あれから月日は流れて、私も石けん生活が自分の人生の一部となっている。とり憑かれたように石けんを作る日々はもう終わったといっても過言ではないが、たまに思いついたように石けんを作るということは未だに度々あるのだけれど。

最近デビューするソーパーは、情報が私の時より10倍はあり、石けん教室もいつの間にか増えて石けん作りをすることはより簡単になってきた。当時も石けんを売るネットショップはあったが今ほど数は多くなく、これも石けん作りが浸透してソーパーの数が増えているのだと思うのだが現在ではショップはもう数えられないくらい存在する。

昔から石けんを売る、ということは果てしなく語られてきた。石けんは売れないのである。でも作って見て自分が使って良くって、これを人に知って欲しいというよりは、これは売れるかも!と思う人もたくさんいると思う。友達にあげたところで気に入った人から「これ、売れるよ!」と言われることも少なくない。実際にブティックをやっている友達に頼まれて、事あるたびに30個とか石けんを卸していたこともあった。

最近ちょっと思っている・・石けんを売るということを考えてみる。

石けんは薬事法があり、身体に使う目的では薬事法を通さないと売れない。しかしここに言葉のあやが存在するので、雑貨や台所用として売ることは問題ないとされる。薬事法もかなり厄介で、自治体によってその対応はかなり異なる。中には石けん作りは、素人にむやみやたらに苛性ソーダを扱わせるきっかけになるから、石けん作り自体にいい顔をしない担当者もいるようだ。

石けん作りに欠かせない苛性ソーダは医薬外劇物とカテゴライズされ、購入には身元を証明する運転免許所や健康保険証と印鑑が必要だ。実はこれも以前は印鑑だけで購入は可能だったのに、いつの間にかどっちも不可欠で一度苛性ソーダを買いに行った時、私の前で買おうとしていた人は印鑑を持っておらず、私は身分証明証を持っておらず、私もその人もどちらも苛性ソーダを買うことができなかったということがあった。苛性ソーダは皮膚に乗ると化学やけどを起こし、一気に水を沸騰近くまで加熱する爆発的な反応力を持つ。ただし使い方を間違えなければ、落ちた苛性ソーダの粒を手で触ることも可能だし、その意に反して皮膚についてしまったら水で洗い流せば大事に至ることはほぼない。あの鼻を突く異臭も、それを軽く吸いこんだところで救急車を呼ぶ事態まで陥ったこともない。つまり少しの注意と慣れがあれば、その毒性や危険性は回避可能である。

法に基づいた検査や機関を通さないと、体に使える石けんとしては売れないのは苛性ソーダのせいではない。体に接触させる目的のものをむやみに人に販売してはいけないのだ。では雑貨や台所用では?という疑問がいつも付きまとう。簡単に言うとどこからがクロでどこまでがグレイなのか・・という論議だ。沸々とわきあがっては消え、消えてはまた発生するこの議論・・。効能を謳うということは体への使用とみなされる。泡立ちという言葉もいけない、当店の石けんは雑貨ですので、ご理解いただいたうえご使用下さい、などと苦し紛れに提言するショップも少なくない。ここんとこ人気のクリエイターズマーケットなどでも販売禁止物品に「手作り石けんやコスメ」という項目がお目見えするのも珍しくなく・・というのもアトピーに効くという謳い文句でトラブルがあったとかなかったとか、本当で本当じゃないような話なのだがそんな話も聞く。

石けんを売っている人で、保健所から立ち入り調査が入ったという話も少し前に話題になった。ここもクロをグレイに訂正するよう指摘があったそうで、それをクリアにして売っているそう。でも、でもね、販売している人、これから販売しようと思っている人は、よーく考えて欲しい。石けんは商売になりません。商売を知っている人は、商品価格=原料費+人件費(それにかかった労力と時間)+宣伝広告費+儲け(他ははしょります・・)ということに目を良く向けてほしいんです。確かに手作り石けんは原料費はたいしてかかりません、精油は高いけど。レシピを凝らなければ1バッチ、1000円もあれば作れます。ということはひとつ150円位の原価としましょう。石けんのレシピを考えて作業を開始して片付けまで2時間ちょい。全国の最低賃金は700円位なので1400円、カットして4週間熟成と乾燥させてラッピングします。
熟成中は手を掛けませんが場所をとります。家賃がかかるのです(笑)。でもまあその辺は軽く流してラッピングペーパーやら労力で全部で2000円位?にしておきます。現在のトータル4400円。

ネットショップも今は簡単に作れますが、写真を撮って加工して文章を考えてアップロードして一つの石けんの更新に3時間費やすとして2100円。ネットを使うので、プロバイダ料金やネット接続の料金がこれに加算されます、電気代もね。そんなに掛からないでしょうがひと月1万円位ネットに掛かっているとすれば、単純に30日で割って300円。オーダーが入ってメールでやりとして、入金の確認、発送の包装と手配、場合によっては郵便局やコンビニまで出向き発送する。人件費をまともに考えても500円は下らないでしょう。500バッチの石けんは(勝手に)平均的な大きさから言うと8個だと思うので×8個分=4000円。この段落の小計が6400円で合計10800円。

10800÷8=1350円 (1個の値段)まともに、それでもかなりのところを端折って計算すると石けんはこんな値段が妥当なんです。でもそれが1個600円とか800円で売っても問題ないんですよね。こんなことをいうと反発受けるかもしれませんが、商売ではないのですから、私がここでせこせこと計上した労力や経費の数々はここまで必要ないので。

趣味で作って売れると思ったものを売る、という発想は石けんにだけでなく、ビーズのアクセサリーだったり、ハワイアンキルトのバッグだったり、皆さん趣味で初めて周りからの評判が良くて、試しにオークションで出品したら売れたのでネットショップをやってしまおう、というモチベーションも理解できます。ただね、石けんはやっぱり特殊なんですよ。なぜかというと肌への接触は健康を害する大きな原因になりかねないというコトなので。少し前に「つかってみんしゃいよかせっけん」という石けんの商品に使われていた火山灰の結晶で、角膜が傷ついたという報告があった。最近では「茶のしずく」という商品に使われていた原材料に小麦を加工したものがあり、小麦アレルギーの人が運動中に呼吸が苦しくなったとか、救急車で運ばれたとか「アレルギー」という問題も浮上し、ただならぬ事態が起きたりもした。アレルギーは我が子でその怖さを知ったけど、反応が強いと体中の粘膜があっという間に腫れて呼吸困難に陥り命を落とすことも稀だが、全くないことではないのです。

そうなった時に、あなたは責任を取れますか?責任とは聞こえがいいですが結局は賠償に係わってきます。気軽に作って売ってただけなのに・・そんなことはほぼあり得ない・・自己責任で使ってもらってる、どれもが言い訳にしかならないのです。雑貨で売っても、台所用で売っても、売る側は体に使ってもらうことを前提として売っているのだと思います。原材料:ココナッツオイル、パームオイル、オリーブオイル、シアバター、そんな文言が書かれたラベルがあれば、知っている人は体への使用用途の石けんであるということは明白です。そうなると先ほどの薬事法がどれだけ大切で、物を売るというのは実際は簡単であっても、その裏には多大な労力とお金が動かずには成立しないという事実は揺るがすことができません。企業であれば(願わくば)保険などにも加入したりして賠償などもカバーできるでしょう。薬事法もきちんとした方法で売る手段として不可欠で、それらを踏まえたうえで500gバッチという小さいものでなく、最低でも何万個売るといった宣伝広報の力も必要で、そうなると自分たちが作る原価1つ150円と同じ内容の石けんが、2800円になっても全く不思議ではないという結論にたどり着きます。


でね、ここからが本当に言いたいこと・・

手作り石けんは作って楽しんで、使って楽しむというものではダメですか?たくさんの人が気軽に販売する陰で、色々なトラブルもその人口の増加とともに増えているとも聞きます。それによって苛性ソーダの販売が厳しくなり、最終的には規制する方向に動いていて、そのうち手に入らなくなるという話も最近聞いたばかり。そうなると手作り石けん自体がクロになってしまうんです。もう作れないの。ちょっと非現実的な話かもしれないけど、あり得ない話でもない気もする。中華街の裏道の人目につかない店でこっそり苛性ソーダを買って、逮捕されて新聞に載るなんてイヤだ(さすがの妄想です)。ずっと頭皮の脱皮に悩まされたどり着いた手作り石けん。その楽しみとご利益を失うのは辛いなー。もうボディシャンプーには戻れないし、グリセリンたっぷりで過剰油脂のある石けんの、さっぱりしっとりの洗い上がりは最高だもの。お金で買えないんですよ、この悦び。

「石けんを売る」ということには賛成です。が、しっかりとクリアするものはして、社会的責任の下、採算ベースに乗るような「ビジネス」をするべきだと思うのです。手が出ない・・となるかもしれませんが、きちんとしたプランがあって本当にやる気があれば、簡単ではありませんが叶う夢です。
author:POP, category:テヅクリセッケン&コスメ, 00:57
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